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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)3087号 判決 1980年7月30日

控訴人 中央信用金庫

被控訴人 国 ほか二名

代理人 布村重成 池田春幸 ほか二名

主文

原判決を次のとおり変更する。

東京地方裁判所八王子支部昭和五三年(ケ)第一三四号不動産任意競売事件につき、同裁判所が作成した配当表のうち、別表第一の部分を別表第三のとおり変更する。

控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。東京地方裁判所八王子支部昭和五三年(ケ)第一三四号不動産任意競売事件につき、同裁判所が作成した配当表のうち、別表第一の部分を別表第二のとおり変更する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら各代理人は、それぞれ控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出、認否は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決二枚目―記録六丁―裏五行目「所有の」の次に「別紙(原判決添付)物件目録記載の」を、同一〇行目「右不動産」の次に「中、同目録(一)、(三)、(四)記載の各物件」を、それぞれ加え、原判決三枚目―記録七丁―表八行目「別表第一」の次に「(控訴判決の別表第一、以下同じ。)」を加え、同九行目「売却代金交付計算書」を「配当表(原判決添付配当表、以下同じ。)」と訂正し、同裏三行目「被告国」の次に「の債権金四万六三五〇円のうち金二万三一〇〇円」を、「昭島市の」の次に「各」をそれぞれ加え、同六行目の「別表第二」の次に「(控訴判決の別表第二、以下同じ。)」を、それぞれ加え、同六行目から七行目にかけてと、同八行目の「売却代金交付計算書」、同九行目の「計算書」を、各「配当表」と訂正する。)。

理由

一  訴外原田電気設備株式会社所有の原判決添付物件目録記載の各不動産につき、訴外商工組合中央金庫及び同振興信用組合の申立により、東京地方裁判所八王子支部において任意競売手続(昭和五三年(ケ)第一三四号)が開始された(同年五月一九日任意競売申立の記入登記)ところ、右各不動産のうち同目録(一)、(三)、(四)の各物件については、昭和五二年一一月二六日被控訴人株式会社中矢組のため仮差押の登記がなされ、次いで同年一二月六日右競売不動産の全部につき、控訴人のため根抵当権設定仮登記がなされており、又右競売手続開始決定の後、被控訴人国から前記原田電気設備株式会社に対する昭和五二年度源泉所得税につき、被控訴人昭島市から同会社に対する昭和五三年度固定資産税、都市計画税につき、それぞれ交付要求がなされた。右各不動産は昭和五三年九月二七日競落され、その売得金につき原判決添付配当表のとおりの配当表が作成されたが、右配当表上、控訴人に対しては、同目録(二)の不動産の売得金のうちから金六一万四八一八円の交付額が計上されたにとどまり、同目録(一)、(三)、(四)の各不動産の売得金については、被控訴人らに対して別表第一のとおりの各交付額が記載され、控訴人に対する交付額は計上されなかつた。そこで、控訴人は、昭和五四年五月八日の配当期日において、被控訴人国に対する交付額中金二万三一〇〇円、被控訴人昭島市、同株式会社中矢組の右各交付額全額につき、それぞれ異議の申立てをしたが、被控訴人らは右異議の申立を正当と認めなかつた。なお、控訴人及び被控訴人らの各債権の種類及び債権額を始め右配当表中その余の部分については、何らの異議もなかつた。以上の事実は当事者間に争いがない(弁論の全趣旨を通じて、当事者間に明らかに争いのない事実をも含む。)。

二  被控訴人株式会社中矢組は、前述のように、本件競売申立記入登記以前に仮差押登記を経ているから、本件競売手続において当然配当にあずかることができるが、控訴人の根抵当権設定仮登記は右仮差押登記以後になされたものであるから、控訴人が、右根抵当権をもつて被控訴人株式会社中矢組に対抗することができないことは明らかである。もつとも、控訴人が対抗し得ないのは右仮差押の被保全債権額の限度にとどまるものと解すべく、被控訴人株式会社中矢組の被保全債権額である前記配当表記載の元本債権金一五七二万一〇七五円については対抗できないが、右配当表記載の損害金債権金一三六万七〇八七円については対抗し得るものというべきである。

次に、控訴人は、右のようにその根抵当権をもつて被控訴人株式会社中矢組に対抗し得ないとはいえ、登記ある不動産の権利者であることには変りはないから、本件任意競売手続においては、当然配当にあずかり得る地位を有するものと解すべきである(最高裁昭和五〇年四月二五日第三小法廷判決参照)。この点につき、被控訴人らは、控訴人の根抵当権が被控訴人株式会社中矢組に対抗できないことを前提として、控訴人は一般の無担保債権者と同様の地位にあり、配当要求の申立をしない限り、配当にあずかることはできない旨主張するが、強制執行手続においてはとも角、任意競売手続においては、右主張は採用し難い(最高裁昭和三五年七月二七日第一小法廷判決は、強制執行手続における事案である。)。

ところで、控訴人の根抵当権設定仮登記が昭和五二年一二月二六日付であるのに対し、被控訴人国の交付要求債権金六万六八四〇円のうち、控訴人から異議申立のあつた金二万三一〇〇円の法定納期限が昭和五三年四月二八日であることは、同被控訴人の認めるところであるから、国税徴収法(昭和五三年六月法律七八号による改正前)二三条一項の規定により、控訴人は同被控訴人に優先し、又被控訴人昭島市の交付要求債権の法定納期限が同年五月三一日であることは、同被控訴人の認めるところであるから、地方税法(昭和五三年六月法律七八号による改正前)一四条の一七第一項の規定により、控訴人は同被控訴人に優先し、他方、また、被控訴人国及び同昭島市の各債権が、仮差押登記を有するに過ぎない被控訴人株式会社中矢組に優先することは、国税徴収法八条、地方税法一四条の各規定により明らかである。

以上、要するに、控訴人と被控訴人らとの間には、控訴人は、被控訴人株式会社中矢組に優先しないが、被控訴人国及び同昭島市に優先し、被控訴人国及び同昭島市は、被控訴人株式会社中矢組に優先するという循環関係があるものというべきである。

三  右のような循環関係の場合の配当の順位については、実定法上明文の規定はないが、国税徴収法二六条二号ないし四号は国税と地方税等と私債権とが循環関係にある場合の換価代金の配当方法として、競合する債権を租税債権のグループと私債権のグループとに分け、各グループの一番強い債権について優劣を較べ、そのうち強いものから順次その債権額に見合う換価代金をそれぞれのグループに配分し、各グループにおいて、右金額を実体法の規定に従つて個々の債権に配分すべきことを定めているので、同じく循環関係にある本件の場合、同条を類推適用するのが相当である。

ところで、本件の場合、当事者間に配当すべく争われている金額の総額は、配当表上被控訴人国に交付すべきものとされている金四万六三五〇円のうちの金二万三一〇〇円、被控訴人昭島市に対する金六万六八四〇円及び被控訴人株式会社中矢組に対する金四三五万二一九三円の合計金四四四万二一三三円であり、控訴人の配当要求債権は、債権額金五六〇万二〇七円から配当表上控訴人に交付すべきものとされている金六一万四八一八円を差引いた金四九八万五三八九円である。

そこで、国税徴収法二六条の規定を類推して本件配当方法を考えると、前記二に説示したところから明かなように、本件において一番強い債権は控訴人の根抵当債権であり、被控訴人国及び同昭島市の各租税債権がこれに次ぐ(被控訴人株式会社中矢組の仮差押の被保全債権は、控訴人の根抵当債権に優先するが、右各租税債権には劣後するので、後順位とする。)ので、前記配当金総額金四四四万二一三三円から、先ず控訴人の債権額に見合う金額を、控訴人と被控訴人株式会社中矢組との私債権グループに配分することとなるが、控訴人の配当要求債権金四九八万五三八九円は既に右配当金総額を上廻つているので、被控訴人国及び同昭島市の租税債権グループに配分すべきものはないこととなる。そして、控訴人の根抵当権は、前述のように、被控訴人株式会社中矢組に対しその仮差押の被保全債権金一五七二万一〇七五円の限度で対抗できないから、前記金四四四万二一三三円は、控訴人の債権金四九八万五三八九円と被控訴人株式会社中矢組の右債権金一五七二万一〇七五円とに応じて按分配当すべく、左の算式のとおり、被控訴人株式会社中矢組に対する交付額は金三三七万一五七九円、控訴人に対する交付額は金一〇七万五五四円とするのが相当である。

(被控訴人株式会社中矢組)

4442133×15721075/(15721075+4985389) = 3371579

(控訴人)

4442133×4985389/(15721075+4985389) = 1070554

以上を総合すると、本件各当事者に配分すべき交付額は別表第三のとおりとなるから、本件配当表のうち別表第一の部分は、別表第三のとおり変更されるべきであるといわなければならない。

四  してみれば、本件配当表のうち別表第一の部分を別表第二のとおり変更することを求める本訴請求は、別表第一の部分を別表第三のとおり変更する限度で理由があり、認容すべきであるが、その余の請求は失当としてこれを棄却すべく、これと異る原判決を右のように変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 田宮重男 新田圭一 真榮田哲)

別表第一

別表第二

別表第三

債権者

交付額

交付額

交付額

青梅税務署

(被控訴人国)

46,350円

23,250円

23,250円

配当表の上から5行目

昭島市

66,840

0

0

〃 6行目

(株)中矢組

2,985,106

3,345,647

3,371,579

〃 13行目

同上

1,367,087

0

〃 14行目

中央信用金庫

614,818

614,818

614,818

〃 15行目

同上

1,096,459

1,070,554

〃 16行目

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